キット・ダウネスのアコースティック・トリオが切り拓く新たなジャズの地平。
Kit Downes’ acoustic trio opens up new jazz horizons.
Kit Downes Trio / Quiet Tiger / 2011
Piano, Composed By – Kit Downes
Bass Clarinet, Tenor Saxophone, Guest – James Allsopp
Cello, Guest – Adrien Dennefeld
Double Bass – Calum Gourlay
Drums – James Maddren
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JazzDog’s Rating ☆☆☆☆
Degree of
Contemporary / コンテンポラリー度 ☆☆☆
Thrilling Sounds / スリリング度 ☆☆☆
Stylish / スタイリッシュ度 ☆☆
Advance / アドバンス度 ☆☆
Abstract / アブストラクト度 ☆☆
Feel good / ご機嫌度 ☆☆☆
Lyrical / リリカル度 ☆☆☆
Romantic / ロマンティック度 ☆☆☆
Dreamy / ドリーミー度 ☆☆
Ambient / アンビエント度 ☆☆
Individual Style / 個性的なスタイル ☆☆☆
Stylish cover arts / ジャケ買い度 ☆☆☆
先週、関連作品を2作紹介したUKのピアニスト、キット・ダウネス。
きょうは、彼のトリオのセカンド・アルバム(ファーストはサブスクにない)を。
2011年の“ クワイエット・タイガー ” 。
メンバーはピアノのキット・ダウネスに、
ベースのカルム・グーレイ、
そしてドラムのジェームズ・マドレンという構成だ。
ただ、このアルバムに関しては、
バスクラリネット、テナーサックスのジェームス・アルソップと、
チェロのエイドリアン・デンネフェルドをゲストに迎えて、
サウンドのレイヤーをより深めている。
ダウネスは、このトリオの他にも先週紹介したような電子音バリバリのユニットやオルガンでのプレイ。はたまたパイプ・オルガンまでをも使いこなす振り幅の広い音楽性が特徴だけど、いずれもドローン・ミュージック(持続低音を主体とした音楽)ぽい低音をオルガンやシンセで多用する。
このアルバムでは、アルソップのバスクラリネットがその役割を演じていてサウンドのキモといってもいい。
全曲がダウンズ作で、アルバムの出だしからロマンチックなストーリー性を感じられ、
(ひょっとしてジャケット・デザインによる効果も大きいかも)
映像的で作家性の強さを感じられるアルバムだ。
曲によっては、激しかったりファニーだったり、静かだったりと起伏にとんでいる。
ダウネスのピアノ自体は、陰翳深くモンクやメルドーらしさが感じられるけど、
何と言っても、楽曲自体の魅力とソロの魅力が渾然一体となって独自の世界観を構築しているところが素晴らしい。
メロディックでアブストラクト、ファニーでシニカル。
映像を喚起するサウンド構築力と豊かなピアノ表現。
UKなのにまったくUKらしくなく、
かといって、どこにもない新たなジャズの地平。