ビバップの世界に、サイモン・ムリエがブルターニュから届けた新しい風!
A new wind in the world of bebop, delivered from Brittany by Simon Mourier!
Simon Moullier / Isla / 2023年
サイモン・ムリエ / イスラ
Vibraphone – Simon Moullier
Piano – Lex Korten
Bass – Alexander Claffy
Drums – Jongkuk Kim
きのうは、ポーランドのヴィブラフォンの新星マルチン・ペイターのトリオを紹介したけど、きゅうは、ヨーロッパそしてヴィブラフォンといえば、この人でしょなサイモン・ムリエ。
フランス出身でNYで活躍するムリエが、
コロナ禍、ブルックリンを離れブルターニュ沖の小さな島で家族と過ごした時間に生みだした新作が本作だ。(タイトルは、アイランドのアイラではなく仏語風に読むイスラだろうか、たぶん)
ピアノにレックス・コルテン、
ベースにアレキサンダー・クラッフィー、
ドラムスでキム・ジョングクというメンバー。
3人は、同世代でともにブルックリンで活躍する仲。
ベースのクラフィーも ↓で注目株だし、
ドラムのジョングクは、ムリエの作品すべてに参加してるし、
近年多くの賞を受賞し評価の高いピアニストのコルテンとジョングクは、↓ 他のユニットでも気心知れた仲。
ムリエが、気心知れた気鋭のプレイヤーたちと創りあげた作品は、美しく創造性に満ちている。
何の楽器でもプレイヤーは自分だけの音色、声を手に入れようと躍起になると思うけど、
ムリエはその点においてすでに成功している。
誰が聴いてもムリエだと分かるその音色は、ヴィブラフォンという楽器の特色を考えると驚異的なことだ。
加えてそのメロディックな想像力と即興性は驚異的で、
じつによく歌うそのヴァイブは、聴くことを飽きさせない。
そして、このアルバムでは、なんと言ってもムリエとコルテンのピアノのコンビネーションが抜群で、2人の対話、歌がじつに心地よい。
また、ベースのクラフィーとドラムのジョングクの息もピッタリだし、
ことにジョングクのドラミングは、歌ってると言うか、軽やかなダンスを思わせる心地良さに加え、新たな感覚をもたらす新世代だ。
スタンダードな4ビートではなくとも、
聴けば聴くほど伝統に根付いたジャズの継承者であることが感じられる軽やかで美しい名盤。ビバップの世界に、サイモン・ムリエがブルターニュから届ける新しい風は、実に爽やか。