天才ジョエル・ロスが、課題で巡り合ったブルースに新解釈!
A new interpretation of the blues that the genius Joel Ross encountered in his assignment!
Joel Ross / Nublues / 2024年
ジョエル・ロス / ヌブル−ズ
Vibraphone, Liner Notes – Joel Ross
Alto Saxophone – Immanuel Wilkins
Bass – Kanoa Mendenhall
Drums – Jeremy Dutton
Flute – Gabrielle Garo
Piano – Jeremy Corren
さて、本日は最近のアルバムから1枚。
若きヴィブラフォン奏者 天才ジョエル・ロスの最新作。
タイトルでも分かる通り、ブルースをテーマにしている。
パンデミック下でニュースクール音楽院に復学したジョエル・ロス。そこでダリウス・ジョーンズが教えていた授業ではブルースの歴史を掘り下げるよう促された。
ロスは、ブルースとはどういうものなのか、単なる12小節の形式ではないのだと思い知らされた。「精神やエネルギーのようなものだ」とロスは言う。「感情であり、表現なんだ。でも、私たちがすでに発展させてきたリズムのアイデアに忠実でありたいとも思っている」。
ブルースについて学び、ブルースの歴史を理解し、このバンドのサウンドとバンド構成を発展させることに集中する旅を楽しんだという。「私にとっては、あらゆる情報に触れ、それがどうあるべきかを見極める旅だった。それは常に続いている。これまでと同じことを続けてきて、それがどのように変化してきたかを知るためのスナップショットなんだ」
そう、彼なりに新たにブルースを掘り下げ、探求した結果がこのアルバムというワケ。
上記の通り、単なるブルースでないことは一聴して歴然。
そこにはモンクやコルトレーンの楽曲も含まれるけど、
まさしくロスのインナートリップとも呼ぶべき、
彼が吸収してきたあらゆる要素が織り込まれている。
ソウルフルでスピリチャルな佇まい、
オーガニックな優しさ、
そのタイトル通りバッハなバロック的要素、
それらが楽曲ごとの境目もはっきりしないようなシームレスな展開で、
フリージャズのようなインタープレイの中で、
ときに美しく、ときに力強く、繰り広げられてゆく。
メンバーは、
アルト・サックスのイマニュエル・ウィルキンス。
ピアニストのジェレミー・コレン。
ベーシストのカノア・メンデンホール。
ドラマーのジェレミー・ダットンというおなじみのクインテット。
そこにフルート奏者のガブリエル・ガロが3曲ゲスト参加している。
おもにソロをとるのは、ウィルキンスとロスだけど、
2人のインプロの深度には、唸らせられる。
また、コレンのピアノもよく反応するし、
ガブリエル・ガロのフルートも見事。
また、すっかり息のあったリズムの2人も申し分のないパフォーマンス。
今回、ロス特有の畳み掛けるようなポリリズム的フレーズの速攻は見られないけど、
静かにも美しい新たなロスの音世界が堪能できる。
それにしても、これまで聴いてきたロスの演奏が、
まだまだ学習半ばでのそれであるという驚き。
まだまだ進化を止めない天才の労作に、よろこびと期待は膨らむ一方だ。