顔芸か!てくらい懸命な表情で叩くのが楽しいアリ・ホーニングのリーダー作は、いつも驚きに満ちている。
Is it a facial trick? Ari Hornig’s works are always full of surprises.
Ari Hoenig / Bert’s Playground / 2008年
アリ・ホーニグ / バート・プレイグラウンド
Drums – Ari Hoenig
Alto Saxophone – Will Vinson (tracks: 3, 7)
Tenor Saxophone – Chris Potter (tracks: 1, 4, 9)
Bass – Matt Penman (tracks: 1, 3, 4, 7, 9 )
Bass – Orlando Le Fleming (tracks: 2, 6, 8, 10)
Guitar – Gilad Hekselman (tracks: 2, 10)
Guitar – Jonathan Kreisberg (tracks: 1, 3, 4, 6 to 9)
≪ 現代ジャズドラマー列伝・アリ・ホーニグの巻 ≫ 第2弾は、
時系列が前後するけど、2008年のホーニグのリーダー作品。
10曲中5曲がオリジナルで、あとがスタンダード。
それゆえ、きのうのアルバムよりは4ビートもあるし、
若干入りやすいというか、大人しめ。
すこしリラックスしたムードも感じる……
なんて思ってたら大間違い!
出だし、のどかなギターで始まるけど、
次第に不穏なコードが混じると思ったら、クリス・ポッター見参!
一気に怒濤の展開となる。
ポッターのヘクセルマンとのトリオ演奏は、互いがむき出しでスリリング。
4曲目、ポッターとギターのジョナサン・クライスバーグの絡みもいい。
5曲目、クライスバーグのギターは、
クリアで温かなサウンド、これぞジャズ・ギターなフレージング。
巧みなコードワークと、ピッキングのバランスは、教科書的なすばらしさ。
全体的に、和やかなメロディ・リフに気を許してたら、
あるいは、小さめの音量でサラッと流してたら、
なんか、おだやかなアルバムかな、って感じするけど、
音量上げてガッツリ聴くと、かなりエグいことやってる(褒めてる)。
ドラム好きにとっては、ホーニグの音を追っかけているだけで楽しいし、
ホーニグが、他のメンバーにどういう風に反応してるかを追っかけると、
かなり、空恐ろしい(褒めてる)ドラミングなのが分かる。
“Round Midnight” では、お得意のドラムだけでメロディーを奏でる奏法も楽しめる。
このメンツ、
サックスがウィル・ビンソンとポッタ−。
ベースがオーランド・ル・フレミング に、マット・ペンマン。
そして、ギターがギラッド・ヘクセルマンにジョナサン・カールスバーグという、
そそられまくるメンバーだし、ただ穏やかにすむはずがない。
それでもやっぱり、サックスでクリス・ポッターが参戦してるのが大きいかな。
その存在感に、他のメンバーにも火がつく。
顔芸か!てくらい懸命な表情で叩くのが楽しいアリ・ホーニングのリーダー作は、いつも驚きに満ちている。
Ari Hoening / アリ・ホーニグ
– 1973年、ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ –
父親は指揮者でクラシック歌手、母親はバイオリニストでピアニスト。6歳のときからバイオリンとピアノを習い始めた。12歳でドラムを始め14歳の時には地元のクラブで若いジャズミュージシャンたちと腕を磨く。フィラデルフィアの高校に進学し、そこで音楽理論や楽器演奏の技術を学び、卒業後NYへ。
メンバーと調和しながらも複雑なリズム、高度なコンビネーションを難なくこなし、誰よりもエモーショナルなプレイスタイルでグループを牽引し、聴衆を虜にする。また、マレットあるいは手や肘を使ったミュート&ベント奏法(トーキングドラムというか、ドラムでメロディを歌う奏法)を得意としており、さまざまな表情を見せるドラミングは圧巻。
数多くのレコーディングに参加し、自身のリーダーとしての作品も精力的にリリース。また教育活動にも力を注いでいる。その高い演奏技術や独自のプレイスタイルによって、現代ジャズシーンで非常に重要な存在である。