メルドーならではの深度をそなえた新たなソロ・スタンダード集。
2023年度の必聴盤。
This new collection of solo standards, with the depth that only Mehldau can provide, is a must-hear for the year 2023.
Brad Mehldau / Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles / 2023
Piano – Brad Mehldau
きょうも、最近の話題作から。
ブラッド・メルドーのソロ・ピアノ、ビートルズ集。
メルドーのビートルズ集と聞いて、
すぐに飛びつかなかったファンも結構いるのではないだろうか、
いやオイラがそうでした。
ビートルズ曲と言えば、メルドーが必ずと言っていいほどライブで演奏もするし、スタジオ盤でも、しばしば採り上げられてきた。
でも、それはちょっと箸休め的存在な気がして、
「箸休め集」出されてもなと正直思った。(メルドー先生、すみません。)
それでも、聴かないわけにはいかないのがメルドー作品。
遅ればせながら拝聴いたしまして、やはり素晴らしいわけです。
出だし3曲くらいを軽く楽しんでると、
4曲目 “For No One” あたりから俄然エンジンがかかってくる。
そして、後半に向け一気に耳が離せなくなる。
メルドーの発する1音1音のチョイスに、その行方に、
想起されるメロディに、ハーモニーに耳が離せない。
やはり、メルドーは別格だ。
解体され再構築される音の深度が一段違う。
「ビートルズの楽曲は革新性に満ちている」というのは音楽関係者からよく聞かれる言葉だ。そしてその革新性は、いまやポピュラー音楽のベーシックでありスタンダード。
メルドーのピアノ・スタイルしかり、
その革新性は、現代のピアニストにとっては、すでにスタンダードな存在。
このアルバムには、そんなメルドーだからこそ感じえるビートルズ楽曲への理解とリスペクトに満ちている。
メルドーがモチーフとして採り上げるバッハの楽曲同様、
そこにあるのは、ビートルズ楽曲との深い対峙だ。
メルドーならではの深度をそなえたビートルズ楽曲集という新たなスタンダード集。
2023年度の必聴盤。(あ、ラスト曲だけデヴィット・ボウイです)
「アビイ・ロード」から想起されたようなジャケットデザインも秀逸。