その圧倒的な歌心が胸を打つ、クォータートーン・トランペットの新たな使い手イタマール・ボロホフ!
Itamar Borokhov, a new user of the quarter-tone trumpet with an overwhelming singing heart!
Itamar Borochov / Arba / 2023年
イタマール・ボロホフ / アルバ
Trumpet, Voice, Effects, Composed By, Design – Itamar Borochov
Double Bass – Rick Rosato
Drums, Percussion – Jay Sawyer
Oud – Avri Borochov (Tracks: 3)
Piano, Electric Piano, Organ – Rob Clearfield
さて今週は、最近のアルバムから1枚。
イスラエル出身のトランペッター イタマール・ボロホフの2023年の作品。
「微分音トランペッッター」としては、レバノン ベイルート出身のイブラヒム・マーロフがすでに有名だが、このイタマール・ボロホフもそんなクォータートーン・トランペットの使い手だ。
このアルバム、いいですよ〜!
のっけからクォータートーン炸裂の壮大でドラマティックな “Abraham” に圧倒される。
その後も効果的な中東の音階とボロホフ自身のヴォイスに魅了される。
後半では、中東色に隠れて聴き逃しがちな本来のカルテットも魅力、実力がジワジワと迫ってきて「これは、なかなか!」と膝を打つ。
各自の力量とインタープレイ、そしてアンサンブルが見事で、現代的なジャズの新たなスタイルとしての存在感を大きく示す。
しかしながら、ボロホフそしてこのカルテットの魅力は、
なんといっても、哀愁とか叙情とかそんな使い古された言葉では表しきれぬほどの、
その血に奥深く染みついた歌心、メロディへの希求ではないだろうか。
楽曲のテーマ、あるいはインプロビゼーション、はたまたそのアンサンブルにまで感じられる圧倒的な歌心が、聴くものを掴んで離さない。
このアルバムも、2023年度を代表する1枚だと確信する。