彼方に見える自由の女神が放つ灯りは “ 不安 ” に抗う静かな炎。異なるバックグラウンドを持つ3人が織りなす躍動感が美しい “ Uneasy ”!
The light of the Statue of Liberty in the distance is a silent flame against insecurity. Uneasy” is a beautiful and dynamic performance by three people from different backgrounds.
Vijay Iyer, Linda May Han Oh, Tyshawn Sorey / Uneasy /2021年
ヴィジェイ・アイヤー / アン・イージー
Piano – Vijay Iyer
Bass – Linda May Han Oh
Drums – Tyshawn Sorey
Produced By – Manfred Eicher, Vijay Iyer
Composed By – Cole Porter (tracks: 3), Geri Allen (tracks: 5), Mike Ladd (tracks: 4), Vijay Iyer (tracks: 1, 2, 4, 6 to 10)
またまた、≪ 現代ジャズドラマー列伝 タイショーン・ソーリーの巻 ≫ 。
これは傑作!コロナ時代を象徴するような名盤。
セクステットの構成から、またまたピアノ・トリオでの作品。
現代のトップランナー ピアニスト ヴィジェイ・アイヤーの最新作。
ドラムは、もちろんタイショーン・ソーリー。
そしてベースは今をときめくリンダ・メイ・ハン・オーだ。
ひさびさのピアノ・トリオ作品ということもあり、
ファンは目一杯アイヤーのピアノが楽しめることをまずよろこんでいるハズ。
全編にわたって、アイヤーとソーリーのバトルというか対峙というか、恐ろしく白熱したボクシングのマッチのような様相。美しいまでに昇華したコミュニケーションのカタチ。
そして、その2人を取り持つベースのリンダの素晴らしいこと。軽やかに、ときにダークに物語を紡ぎ出す。
現代社会の不安をテーマにしたということでシリアスな曲ばかりだが、
アイヤー作ではない2曲では歓喜が爆発するようで、
これもまた大きなアクセントとなっている。
もちろん脳天気な楽曲ではないが、しだいに3人の熱にほだされ、
いつのまにか高ぶっている自分に気づく。
ヴィジェイ・アイヤーのことだから、次にはまったくコンセプトの違うアルバムを出しそうな気もするけど、ぜひとも長い期間作り続けて欲しいメンツだ。
ジャック・ディジョネットとゲイリー・ピーコック&キース・ジャレットのスタンダード・トリオを継ぐ、あるいは超える存在と言えるのではないか。
キースが倒れ、チックが往ってしまったときに現れた新たなトリオ。
勝手に色々と期待してしまう。
間違いなく現代ピアノ・トリオの最高峰、傑作。
Tyshawn Sorey / タイショーン・ソーリー
– 1980年、ニュージャージー州ニューアーク生まれ –
ドラマーであるとともに、作曲家、マルチ・インストゥルメンタリスト、現代音楽教授でもある。
ニューアーク芸術高校を卒業。2004年ウィリアム・パターソン大学でジャズ研究とパフォーマンス課程を修了し、クラシックトロンボーンを専攻した後、ジャズドラムに転向した。
2009年、ウェズリアン大学に入学し、2011年春に修士号を取得。秋にはコロンビア大学で博士課程を開始し、2017年作曲の音楽芸術博士号も取得。その後、ウェズリアン大学の音楽助教授に就任し、同大学でEnsemble for New Musicを設立し、作曲と即興音楽に関する講義を担当した。2017年秋には、音楽演奏と作曲における活動のためにマッカーサー・フェローシップを授与された。2020年には、ペンシルバニア大学の音楽学部学長補佐として教員に就任。
ドラムスタイルは、彼自身の作曲家、指揮者、マルチインストゥルメンタリストでもある音楽的背景が反映されており多様なパターンやリズムを繰り出し、時にはテクニカルで激しい演奏を見せながらも、繊細で美しい音楽を奏でる。
ジャズに限らず、現代音楽や即興音楽、クラシック音楽など、幅広い音楽ジャンルに精通しており、ドラム以外にもトロンボーン、ヴィブラフォン、チェロ、トランペット、ピアノなどを演奏することもあり、その多彩な音楽性が彼の音楽に深みを与えている。